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2019-10-24

旅にはライカM5と一緒に歩いた

現在、ビストロこば家しで行っている写真展『フランスの世界展』ではフィルムカメラのライカM5を使用している。買ったのは写真スタジオに勤め始めた22〜23歳の頃で、カメラアシスタント駆け出しの若造にしては今思うと贅沢な買い物をしたと思う。先輩カメラマンが当時ライカにハマっており、撮影の仕事帰りにライカを物色するため近所の中古カメラ屋へ一緒に入ったのがきっかけだった。

先輩は目当てのライカがあったのか、店主にガラスケースからカメラを取り出してもらいファインダーやシャッターを切っていた。私はそれとはなしに他のカメラを眺めていると、ガラスケースの端に見た事のあるフォルムのカメラを見つけた。ストラップが縦吊りで丸みをおびたブラックボディー。以前に雑誌である写真家がそのカメラを肩に、さっそうと写真を撮る姿をすぐ思い出した。

「あれはライカM5だったのか」

「考えるな、感じろ」とは有名な言葉で、高価すぎて購入するつもりは無かったが店主にガラスケースから出してもらうと、肩にかけたりファインダーを覗いたりと感触を味わった。重み、ホールド感、ファインダーの明るさや存在感などなど、どれも今まで味わった事ないインパクトを感じたし、その頃はニコンFE2を使用していて、一眼レフカメラ(ニコン)とレンジファインダーカメラ(ライカ)の違いにも大きく驚いた。その感動に似た衝撃とともに、ライカを肩に世界を歩き被写体に向けてさっそうと写真を撮るかっこいい”自分の姿”を想像してしまったのだった。

「これ、ください。」

ライカM5ボディーとレンズはズミクロン35mmを合わせて35万円くらいだったと思う。カメラアシスタントに払える経済力も無く分割払いは言うまでもない。全く買うつもりもなくフラッと入って35万円のライカを購入している自分がいた。恐るべしライカ。

以降、日本、フランス、アメリカと海外へ持ち出す機会ができると、その地で写す写真にライカは手応えを与えてくれた。アメリカの写真展(2005年IN MAN)、フランスの写真展(2008年フランス景)と多くの写真を撮ってきたが、ライカの撮る写真にはどこか色気を感じてならない。

そういえば、フランスでは美術館の手荷物検査でバックの中にライカを見つけた黒人の警備員が「グレイト マシーン」と顔を横に振りながら口笛を吹いたのには笑ったな。

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