椅子やテーブル、ソファなど家具の撮影をかれこれ20年以上続けてきましたが、家具との出会いはとても魅力的で撮影する側として奥深いものを感じます。
デザイナーズ家具はそのデザイン性と構造に独特な雰囲気を持っているので、デザインの成り立ちや職人の高い技術力など家具の背景に興味が尽きません。
Sorte (ソルテ)
私が撮影に携わった家具ですが、カタログから以下の特徴がわかります。
木工技術の粋を注ぎ込んだ、個性的な木製のデザインチェア
・座面の三次元曲線を一体の成形合板で作り出した。
・ソルテとは、イタリア語で「浮遊」を意味する言葉。やわらかな布がふわりと浮いているような対比を効果的にするため、木枠は無骨なまでに直線的なデザインに仕上げられています。
・立体格子に組まれたこの木枠は、古くから日本の建築や家具に用いられてきた木の接合方法を応用したもの。
・天然木の持つ特性への理解と正確無比な加工技術がなければ、歪みなく組み上げるのは不可能です。
先日インスタグラムで載せた写真は、この椅子のイメージ写真。カタログに掲載するために撮影を行いました。
全体のフォルムを見せるというよりもグラフィカルに写し、デザイン性や質感、特徴を強くイメージする写真です。
立体的なものを平面的に写す事でイメージの側面が増し、よりリアリティーを感じるわけです。
撮影にはいくつか特徴があります。
赤ラインのように画面に水平垂直に椅子を配置。
整然としたアプローチで形状の美しさ=写真としての美しさを狙います。
ピントの位置は背面の上角辺り。
成形合板と木目、画面内唯一の曲線にピントを合わせ、あとは自然にボケていくように絞りは浅め。
奥側からの照明(光)をメインにトップライトで全体に光を回します。
背面と座面の明るさのバランスは微妙なあんばいで。
肘部分の奥から手前に向かって光のグラデーションを描くように別ライトを入れて調整。
ピントの表現と同じで平面に光の表情が入る事で写真に奥行きが出ます。
このようにして写真を撮っているのですね。
複数の家具が載るカタログ全体の流れもあるので、ディレクターとイメージを共有するのも撮影の面白いところです。
カメラは4×5の大判カメラにデジタルバックを装着。
レンズの中心でとらえながらアオリができるカメラをチョイスです。